![]()
訳者あとがき
(ROTARY ?)
シカゴ・クラブは、自らのクラブの歴史をまとめようとして、1923年にシカゴ・ロータリークラブ歴史委員会を設けたものの、委員会活動は休眠状態が続き、結局その作業は1934年に、シカゴ大学の社会科学研究者の手に委ねられ、本書の出版に繋がった。本書は外部の機関によるロータリー運動、特にシカゴ・ロータリー・クラブの活動に関する調査報告書であるために、ロータリー運動を賛美したり、ロータリー理念を広げたり深めたりする目的を持って書かれた文献ではない。ロータリアンでない人たちが、短期間の間に纏め上げた文書なので、ロータリーの根幹をなす哲学や奉仕理念の部分が殆ど欠落しており、一般市民の目に触れ易い、二次的な活動に過ぎない奉仕活動の実践を中心にして、ロータリー運動を判断している点が、致命的な欠陥かも知れないが、これがロータリアン以外の人たちの、ロータリーに対する平均的な評価なのかも知れない。本書はシカゴ・クラブ会員に対するアンケートの分析が基本になっているが、世界大恐慌の影響を最も強く受け、アメリカがニュー・ディール政策を発表した時期だということを念頭において分析する必要がある。
本書を巡って、シカゴ・クラブの会員の示した拒否反応はかなりのものであったらしく、ポール・ハリスは、ほぼ完成の域にあったThis Rotarian Ageの発行を一年遅らせて、ロータリーに対する間違った解釈を正すために、その内容を修正したという話すら伝わっている。その後、シカゴ・クラブは独自にクラブ史を作る必要性があることを改めて痛感し、歴史委員会が中心になって資料を集め、1966年にやっと発行されたのがGolden Strandであるが、この本の著者Oren Arnoldもまた、シカゴ・ロータリークラブの会員ではない。
ロータリアンとして、この“Rotary?”の内容に不満を抱いたとしても、ロータリーの実態と奉仕理念を地域社会の人たちに正しく理解してもらうことなしに、ロータリー運動を地域社会に広めたり、地域社会の人たちと共に奉仕活動の実践をすることは不可能なので、外部の人たちからの批判を謙虚に受け止め、正すべき点は正し、主張すべき点は主張する態度が必要であろう。
「著者は特にシカゴ大学の社会科学の専門家から選出した委員の、思慮緻密な批評に注意せねばならないと思う。彼らの批評を非実際家の妄想とみなしこれを抹殺すべきではない。彼らは決して浅薄でないのみならず、彼ら委員にはロータリー文書を研究し、また多くのロータリー会員と協議する機会が充分提供された。委員はこのような機会に恵まれているから彼らの批評は悪意をもって激発していない。すなわち彼らの批評を鼓吹したものは好意であった。その批評は、自ら満足したクラブを動かしてその惰眠より覚醒させ、無頓着のクラブを幻惑より離脱させる効果があった。すべてのクラブを向上させ一層高い責任を感ぜしめたのである。……中略……しかもシカゴ大学選出の委員がシカゴ・クラブに提出した推薦の一つにより、将来論争をかもすおそれのある定款の付則も変更するに至った。シカゴ・クラブのこの修正に賛成した決議は大多数をもって通過し、その種題目に関する討議は完了したと言ってもよいのである。当該委員の報告は相当の時間を費やし、かつすこぶる巧みに問題を取り扱った。ここにロータリーという世界に普及した組織の力が、大いに活用される最大の機会が横たわっているとされた。シカゴ大学選出の委員からみると、シカゴのロータリークラブは勢力ある約七百名の実業家をもって成立し、これらの会員は種々の商業や職務に従事しているから、同クラブは社会の重要問題を討議する理想的議場であり、公共の指導者を養成する理想的団体をなしているのであるから、委員の目にはロータリーの前途は最も有望で、会員は区々としてただに博愛慈善の方面の尽力に止まるべきものではないと考えられている。しかし著者はロータリーが現在必要として力を致している方面が油断のならないことを望むもので、ますます実験を重ねてその行程の才知が明らかになるまでは、ぜひともロータリーの現状を継続して欲しいのである。……This Rotarian Ageより米山梅吉訳……」