4.      指導力を持つ集団

(ROTARY ?)

 

奉仕や新しい形の親睦の高まりが、広く一般の社会から認識されたとき、初めて、現代の諸問題を処理する知的で迅速な行動が可能となるに違いない。

シカゴ・ロータリークラブや一般的なロータリー活動は、社会に役立つ奉仕活動のプログラムを計画すると共に、その指導力を今日のニーズに対処できる方向に向けるように自らを軌道修正すべきである。

 

 個人の利益や一般的な事業の収益は、単なる個人の努力や人と人との付き合いによって得られるものではないし、そのような努力や付き合いだけでは、現在の世界の市民問題や国際問題を処理するには不充分であることは明らかである。

 

 ロータリーが古い形の親睦を深めているだけでは、知的で建設的な活動を刺激するのに充分ではないという結論に達することができれば、もっと素晴らしい昼食例会クラブになることを認めなければならない。

 

 これらの提案は社会科学調査委員会の単なる見解ではなく、1930年代における産業界、社会的な関係、地方自治体、国内、国際的な生活の時代的ニーズを勘案した、確かな仮説に基づいたものである。

彼らは、各地の社会科学者の主流派や、慎重に選抜された実業家や専門職種の会員たちから選ばれた人たちであり、彼らの意見は、アメリカ合衆国における最近の社会的傾向に関する、フーバー大統領の委員会の報告にも反映されている。

 

 古い利己主義は、急速な経済発展と市場拡張の時期には、事業上の利益だけではなく、国家の繁栄と公衆の福祉を促進してきたが、その弊害によってもたらされたその後の経済的不況の時期には、デフレーション、信用や通貨危機、失業、貧困、階級闘争、関税戦争、および未曾有の規模の悲惨な国際的混迷を引き起こした。

これは、高い利益を求めた実業家と、高い賃金を求めた労働組合と、名声を求めた外交官たちの、もはや制御のきかない泥沼の争いの結果とも言えよう。

 

 現在の世界危機は、多分、ミコーバー氏のように、何とかなるだろうと、人々がただ気長に待っているだけで通り過ぎるような、「まさしく他人事の不況」ではないし、19世紀の価値感や体制や方針に、歩みを戻すことによって原点に返ったとしても、もはや解決されるものではない。集団として前進していく計画に対して、個人と団体の活動を統括調整するためには、足並みをそろえた行動と総合的な社会の英知を集めて、社会秩序と経済計画の母体を創設することによってのみ、すべてが解決される可能性がある。

 

ロータリーは大きな機会を持っている!

 

 我々の経済機構を再び機能させるための現在の試みは、ロータリーにとって大きな機会である。それには、その分野における最高の能力を持っている実業家と専門職種の人たちの、活力と知的な指導力が要求される。

農夫や労働者や零細な商人や店主ではなく、社会的な名声や経済力や政治的な影響力をもっている実業界の指導者たちによって解決されれば、この危機は間違いなく回避されるに違いない。

これらの指導者たちは、たとえ古い利己主義のなごりが残っていたとしても、当然のこととして利己主義ではなく全体のことを考えて行動するに違いない。 

 

ロータリアンにとって最大の関心事は、この指導力がどこからもたらされるのか、どのようにして教育されたり組み込まれるのか、どのようにして短時間の間に備わるのかという問題である。

 

もしそれが誰かからもたらされるとすれば、当然のことながら、事業家や専門職種の人たちの層からであることは間違いない。それは既存の組織や事業家や専門職種の人たちや、商工会議所や専門職種と商業の同業者組織、愛国的な社会団体からかも知れないし、その他の奉仕クラブや職業分類クラブからかも知れない。アメリカではまだ現実化していない半ば政治的な新しい組織からかもしれないし、ロータリーからかもしれない。  

 

 調査委員会は、必ずしもロータリーだけが、事業や市民運動の指導力を開発できる唯一の機関であると指摘するように、心配りをしているわけではないが、ロータリアンの空想をくすぐったり、虚栄心を満たすような指摘をするように、若干配慮しているつもりである。

ロータリーはその独特な組織の長所と目的によって、そのような指導力の開発に向けて、他のグループ活動よりもさらに多くの活動が可能であることを述べると共に、この視点から、ロータリーの長所と短所を議論するつもりである。

 

望ましい指導力の型

 

 もし西欧文明が現在の水準で生き残るとするならば、危機を目覚めさせる指導力の先頭を走る者は、高い能力を持った知性と教養と誠実さ、広い社会的、経済的展望、および建設的な結論に向けて現代風に諸問題を考える性格という特徴を発揮しなければならないと同時に、実業家と専門職種の人たちの指導によって、集団的な考え方と行動を通じて改善計画の仕上げを成し遂げる、集団の指導力でなければならない。

 

 救済は、十中八九、一人の独裁者や新しい救世主によって達成されるものではない。実業界が全面的に託した、様々な産業や専門職種の代表者たちは、実業界と政府による効果的な救済活動を実施するにふさわしい、総合的な再建計画を考え出さなければならない。

 

 各々が、自らの直接的な関心事以上に、地域社会や国に奉仕することができる良心的な実業家のように、全体の国家経済に関連することに対して、慎重に良識を持って問題の本質を学んだり計画したりする人だけに浮かんでくるものである。 

 それには、政府と実業家や専門職種の指導者たち間における、継続的な協力が必要である。

 

 現在、これらの理念を現実に実行するために必要な、政府と実業界が協力する立法措置が準備されつつある。その準備が整うと同時に、政府と実業界の双方の指導者たちは、立法化で可能となった知恵をはるかに超える運用をすることで手腕を発揮する成功の機会がやってくることを認めざるを得なくなるに違いない。

 

実業や専門職種の団体は、それぞれの団体としての活動をすることに最善を尽くしているが、それぞれの事業と専門職種のともすれば専門的な問題に必要な関心と目的に限定される傾向が強い。過去の経緯を見ても、国の復興計画に携わっているそのようなすべての団体の中で、本当の意味をはっきり捉えている人は誰もおらず、そのやり方に口先だけで同意しながら、未だに古くて疑わしい方法にしがみついているのである。

 

 国家的な計画の重大な意義を把握して、社会の理解が得られる指導力を発揮するためには、単に各々の実業団体だけではなく、すべての経済機構のために重要な事業と専門職種における指導力を広く代表しているグループが、そのニーズを満たす以外には方法はないであろう。

 

職業上の代表者による議会

 

 ロータリーとは次のような団体である。元来、お互いに取引を交換しやすいように、競合しない実業と専門職種の人たちを会員として確保するように計画された職業分類制度は、地域社会の主要な経済活動を広く代表した、一種の職業上の代表者による議会のように、各々の業界の代表者によって構成される結果となった。

 

代表者はそれらの産業のリーダーとして選ばれる。彼らは、各々の職業に関する情報を交換し、奉仕の理念を磨くと共に、以前抱いていたよりもなお一層磨き上げた広い視野や展望や目標を、彼らの業界に持ちかえるために、共に集うのである。

 

ここには、工業や商業や金融や専門職を代表した人たちの共通の力強い親睦と、お互いに関心を持ち、共に奉仕の理想に結束した偉大な教育機関の会員が存在すると共に、アメリカや世界の人たちの生活に、大いに重要な力の根源となる目標や構造を形作る組織が存在するのである。

 

更にここには、現代文明における経済的、社会的な真実を認識としている組織が存在する。その会員たちは政府の人間とは違って、人工的な地理上の地区は代表していなくても、現実の経済活動に対する関心を代表しているのである。 

 

彼らの集まりは、お互いに学びあい、助け合い、事業上の諸問題を自らで学び、彼らの事業や地域社会に奉仕する関心を持って共に行動し、毎日の生活で無数に存在するチャンネルを通じて付き合っている人たちに、その収穫を届けているのである。これは、あらゆる場所における、世界的危機やその国の復興計画に早急に要望される指導力の源となる可能性を秘めた人たちである。

 

 この考え方に対する反対意見も当然あろう。アメリカ合衆国には、数多くのその他の奉仕クラブや職業分類クラブが存在するので、ロータリーだけが、その目的と機構が独特なものではないという指摘があるに違いない。

 

指導力習得のための教育

 

 これらの障害や難題があるにもかかわらず、ロータリーの目的をより的確に会員に教育することなしには、正しい活動をするための奉仕理念を習得できないという、一般的には理解できない現在の条件の下で、ロータリー全体の活動は、そのような指導力の質と機会を開発する能力をすでに備えていることを、調査委員会は明言しておきたいと思う。

 

それは、自らを抽象的な感覚で、単に奉仕をする組織だと考えているのではなく、指導力とは何かという具体的な役割に就いて、会員を訓練し感動を与える教育機関だと考えているからである。

 これは、必ずしも古い考え方による、ロータリー理念や目的、使命、スローガンなどの体系的学習によって、ロータリー教育を集中的に行うことを意味するものではない。

 

 必要なことは、特別な事例に対して、これらの理念をより具体的に適用することである。ロータリーの奉仕が最も有意義なものであることを自らが理解するように、個々の会員に勧めると同時に、自らがそれを適用することが、最も素晴らしい結果を生むと一般的に考えられているにもかかわらず、すべての会員たちにとって、さして重要だと思われないような散発的な活動の成果を気にしながら活動することは、決して芳しいことではない。

その時代における重大な経済的、社会的、政治的な問題に対処する指導力の開発に順応した体系的なプログラムが要求されているのである。

 

ロータリーは本質的に教育機関であり、その目的は指導力を通じて奉仕することを会員に教育することである。指導力を備えるためには、情報が必要である。