冒  険

(ゴールデン・ストランドより@)  

 

 初めて、実業家のクラブを作る考えが彼に浮かんだのは、1900年の夏の頃だった。彼は弁護士仲間の友人と夕食をとった後、夕方の冷気に吹かれながら散策を楽しんだ。友人の弁護士は、自分を高く評価している多くの実業家や商人たちをポールに紹介してくれた。思わずポールは声を出した。

「もしも、このような堅実な人たちとたびたび会うことができたら、それは楽しいことだろう。それぞれの専門職や実業から一人の人が社交的に集まるような。」

 それは一つのアイディアだったが、漠然としたものに過ぎなかったので、直ちに実行に移されることはなかった。ポール・ハリスはいつもいろいろなことを考えていた。シカゴは急速に拡大し、彼の業務もそれによって拡大し、彼の行動範囲と影響力は広がっていった。

 

シルベスター・シールという石炭商の友人と、どちらかと言えば気楽に夕食を摂る、その当日がやってきた。彼らは、夕方早めの夕食を摂ることにした。

なぜなら、その後で、ループにある事務所で2人の実業家と会う約束があったからである。

 彼らは、ループの近くにあるマダム・ガリのレストランで食べることにした。料理は美味しく、彼らの重大な欲望を満たしてくれました。マダム・ガリの店は40年以上も前から、有名人たちに人気のある溜まり場であり、ひいきにしている店でもあった。

 

 このようにして、ポール・ハリスと友人はゆったりした気分で、美味しい食事を終えたのは、1905223の夕方のことであった。やがて、話題は彼の最初のアイディアに戻った。

 ポールは言った。

「私は実業家のクラブについて、ずっと考え続けてきた。それは、シカゴにある社交団体とはまったく違う、新しい種類のものなんだ。」

「どのように違って、それはどんな意味を持つの?」

 シールは尋ねた。

「そうだね。知己と友情を充分に強調したいのだ。しかし、それだけではなく、会員同士がお互いのビジネスを伸ばせたらいいと思う。それが難しいはずはない。」

「例えば、二人の会員が同じ職業を持つことができないと決めればよい。そうすれば、クラブの中には競争相手がなくなる。しかし、もし会員の誰かが品物やサービスが欲しい時には、クラブ内の人と取引する義務を持たせたらよい。相互扶助の一種だけれど、君はどう思う?」

 シルベスター・シールはこの考え方が好きであった。彼らは更に突っ込んだ議論をした。それは確実に約束された大きい報酬が得られるように思われた。シールは多くの新しいビジネスがそのようなクラブを通じて、皆を潤すに違いないと言った。

 

 まもなく彼らは、マダム・ガリの店を出て川を横切り、近くにあるユニティビル711号室のガスターバス・ロアの事務所に行くと、ガスとハイラム・ショーレーが彼らを待っていた。

ショーレーは仕立て屋であり、ポールは数日前に彼に、クラブ結成の考えを述べていた。ショーレーもまた、それに興味を示した。ガス・ロアーはむしろ気楽に最初の討論に参加した。その夜、ガスは自分専用の事務机の椅子に座った。他の者は、座れる場所を探して座った。

 

友人達を見て微笑んでいたポールは、突然、緊張した面もちになって話し始めた。

「ハイラム君。君は我々の新しいクラブの中で、仕立て屋という職業を持っている。私は弁護士である。それぞれのメンバーは自分自身の職業を持ち、我々はお互いに、自分の職業を活かした取引きをする。それは、どうだろう。」

彼は熱心に話した。

 

 四人の友人たちは興味をもって話し合った。ハリスはラグルスという印刷業者がこのクラブに加わるに違いないと思った。ロアはトュニソンという生命保険業者が、見込みありと睨んだ。シールは洗濯屋を営んでいるアーサー・アーヴィンに見当をつけた。すぐに、1ダースにのぼる会員候補者の試験的なリストが出来上がった。四人の会員が各々三人の新入会員を推薦して、承諾を得ることを決め、更に、2週間後に2回目の会合をウォルフビルのハリスの事務所で開くことを決めた。

 

 190539に開かれた2回目の例会では、再びクラブの主旨と可能性が討議された。出席者はポール・ハリス、シルベスター・シール、ガスターバス・ロア、ハイラム・ショーレー、ハリー・ラグルス、ウィリアム・ジェンセン、アル・ホワイトであった。

 

事業の経営者、共同経営者、または会社役員でなければ会員になれないことが決められた。更に、これからの会合の持ち方についても議論を闘わした。

「個々の会員の事務所で代わる代わる例会をしては?」

 ハリスはそう提案した。

「その方法なら、我々それぞれはすぐお互いの職業に対する詳しい知識がつくはずだ。持ち回りという取り決め事はすばらしい。」

 その考え方は重要だと思われたので、採用された。そして、例会は楽観的な雰囲気の中で終了した。

 

 2週間後そのグループは、ステート通り12にあるシルベスター・シールの事務所の石炭置場に約束通りに集まった。この会合の出席者は、ハリス、シール、ロア、ショーレー、ラグルス、ジェンセン、チャールズ・ニュートン、アーサー・アーヴィンが含まれていた。この3回目の会合で、ハリスは、リーダーを選挙する時期であることを提案した。

もちろん、誰もがポールのことを思い浮かべたが、彼は、自分は組織を作り上げる人であると言って、譲らなかった。ポールは、その夜のホストに敬意をはらって、シルベスター・シール会長の名前をあげた。ショーレーは記録担当幹事に、ジェンセンは連絡担当幹事に、ラグルスは会計の仕事が割り当てられた。すべての役職は、満場の拍手をもって選ばれ、シール会長は激励と善意についての短いスピーチをした。